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実運送体制管理簿とは?いつから義務化?対象や罰則など解説
トラック

実運送体制管理簿とは何かをご存じですか?令和7年4月1日に施行される『改正貨物自動車運送事業法』により、トラック事業者は実運送体制管理簿の作成が義務付けられました。この新制度の導入によって、事業者にはさまざまなメリットが期待されています。この記事では、実運送体制管理簿の概要や対象者、罰則規定などについて詳しく解説しますので、ぜひご参考ください。
- 実運送体制管理簿とは?
- 実運送体制管理簿の義務化の背景
- 貨物自動車運送事業法の改正について
- 実運送体制管理簿を作成する対象事業者は?
- 実運送体制管理簿の作成要件
- 実運送体制管理簿の記載事項
- 実運送体制管理簿を作成していない場合の罰則は?
- まとめ
実運送体制管理簿とは?
実運送体制管理簿とは、実運送事業者の名称や請負階層等を記載した管理簿のことです。令和7年4月1日に施行された『改正貨物自動車運送事業法』において、多重下請構造の可視化を図るために、実運送体制管理簿の作成が義務付けられました。
運送業界では、運送の仕事が下請け・孫請けと複数の事業者に渡って依頼される「多重下請け構造」が問題となっており、実際に運ぶ事業者が正当な運賃を受け取れない状況が続いていました。このような構造を「見える化」し、是正する目的で義務付けられたのが実運送体制管理簿です。
実運送事業者の商号または名称、実運送事業者が実運送を行う貨物の内容および区間などを管理簿に記載することで、多重下請けの実態を把握しやすくなります。また、元請が適正な運賃での契約をしやすくなったり、実運送事業者への適正報酬や労働環境改善も期待されています。
実運送体制管理簿の義務化の背景

実運送体制管理簿の作成義務化には「多重下請け構造の見える化と是正」が目的としてあります。運送業界では1990年の規制緩和以降、事業者が増え大手を頂点としたピラミッド型の構造が広がり、3次請け・4次請けといった多重下請けが一般化しました。
この仕組みの中で、特に立場の弱い、実際に運ぶ「実運送事業者」が適正な運賃を受け取れない状況が続いており、業界内でも問題視されていました。全日本トラック協会も「2次下請けまでに制限すべき」と提言しており、今回の制度改正はこうした問題を改善するための一歩として導入されたものです。
いつから義務化?
令和7年4月1日から、実運送体制管理簿の作成が元請事業者に義務化されることになりました。自社が義務化対象であり、かつ条件に該当する運送の場合は、実運送体制管理簿の作成が必須です。実運送体制管理簿の作成は、真荷主から運送の依頼を受けた元請事業者に義務付けられていますが、この場合の真荷主とは以下を指します。
- 自らの事業に関して
- 貨物自動車運送事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、
- 貨物自動車運送事業者以外のものをいいます。「自らの事業に関して」とありますので、一般消費者は真荷主には含まれません。
改正トラック法上の元請事業者は「実運送体制管理簿を作成する貨物自動車運送事業者(※貨物軽自動車運送事業者を除く)」を指します。利用運送事業者はここには含まれません。
なお、元請事業者とは「真荷主から運送の依頼を受けた貨物自動車運送事業者」のことです。あくまで貨物自動車運送事業者であり、貨物利用運送事業者は含まれませんので注意しましょう。
トラック事業者にメリットはあるの?
実運送体制管理簿作成により、トラック事業者には以下のようなメリットがあります。
- 元請事業者は、真荷主に対して確実な輸送実績等を説明できる
- 実運送事業者が収受する運賃・料金の適正化につながる
- 多重下請構造の実態が明らかになり、その是正に向けた取り組みにつながる
実運送体制管理簿の導入により、運送業界の多重下請け構造の是正が進み、適正な運賃が支払われる環境が整っていくことが期待されています。
実運送体制管理簿には下請け手数料が発生することも明記されるため、元請事業者はその分を考慮して料金を設定する必要があります。また、国が定める公式な書類なので、元請事業者は荷主と適正な運賃交渉がしやすくなり、結果として、実際に運送を担う事業者が正当な報酬を得やすくなると考えられています。
貨物自動車運送事業法の改正について

令和7年4月1日に、貨物自動車運送事業法が改正されました。
貨物自動車運送業界では、長年多重下請け構造や低運賃の押し付け、ドライバーの長時間労働が問題視されてきました。より健全な業界構造の見直しのため、貨物自動車運送事業法が改正されることとなったのです。
貨物自動車運送事業法の改正により、以下の事項が義務付けられました。
- 運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む。)等について記載した書面による交付等付け
- 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成
- 下請事業者への発注適正化について努力義務*3を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任
出典:流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律
実運送体制管理簿の作成義務化
元請トラック事業者には、実運送体制管理簿の作成が義務付けられました。
元請事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について利用運送を行った場合、貨物の運送ごとに実運送体制管理簿を作成しなければなりません。なお、引き受けた貨物を全て自社で実運送する場合、実運送体制管理簿の作成は不要です。
情報通知の義務化
実運送体制管理簿の作成対象となる貨物の運送については、以下が義務となります。元請事業者が、実運送体制管理簿の作成に必要な「実運送事業者の情報」を把握できるようにするため、所要の情報を通知しなければなりません。
- 利用運送を行う事業者は、委託先の事業者へ「下請情報」の通知を行う
- 実運送事業者は、元請事業者へ「実運送事業者情報」の通知を行う
元請事業者は、ある運送が実運送体制管理簿の作成対象である場合は、運送委託を行う際、「その運送が実運送体制管理簿の作成対象である旨」を確実に委託先へ伝達する必要があります。
実運送体制管理簿を作成する対象事業者は?
実運送体制管理簿の作成が義務となるのは「真荷主から運送の依頼を受けた元請事業者」ですが、全ての運送が実運送体制管理簿の作成対象になるわけではありません。
実運送体制管理簿の作成対象は、1.5トン以上の貨物となっています。この重さは実運送する際の重量ではなく、荷主(真荷主)から運送を引き受ける際の貨物の重量で判断します。実運送時の重量では判断しないので、注意してください。国土交通省によると、重量の把握ができない場合は、以下のような判断で問題ないとのことです。
- 実重量が把握できない場合は、容積換算重量にて判断いただくことも差し支えありません。
実運送体制管理簿の作成要件
実際に実運送体制管理簿を作成する際に慌てないように、実運送体制管理簿の作成単位や書類方式、テンプレートを確認しましょう。
作成の単位
実運送体制管理簿は、元請事業者が荷主から受託した運送契約ごとに作成します。なお、下請け構造が固定化されている運送の場合、実運送体制管理簿は一度の作成で良く、運送ごとに作成する必要はありません。また、下請け事業者に依頼せず、自社で荷主から引き受けた貨物全てを運ぶ場合は、実運送体制管理簿の作成は必要ありません。
作成の方式
実運送体制管理簿には方式の指定がありません。そのため、各事業所で自由に作成が可能です。既存の配車表を活用するなど、事業者が扱いやすい形での作成や、電磁的記録での作成もできます。
書類の方式やテンプレート
上述した通り、実運送体制管理簿は書類の方式が決まっていません。なお、実運送体制管理簿のイメージとして以下が公開されているため、こちらを参考にするのも良いでしょう。
■実運送体制管理簿のイメージ

書類の保管期間
実運送体制管理簿は、運送を完了した日から1年間保存する必要があります。後日見返すことで運送の状況を把握できたり、実績を明確に提示できるので、正確に保存しておきましょう。保存方法の指定は特にないので、紙またはデジタルデータどちらでも構いません。しかし管理や検索の効率化を重視するなら、デジタルデータでの作成・保存が良いでしょう。
なお、実運送体制管理簿は、運送完了後遅滞なく作成することが望ましいものの、一月分をまとめて当該月の末日や翌月始めに作成する、などの対応でも問題ありません。
実運送体制管理簿の記載事項
実運送体制管理簿には、以下の事項を記載します。
- 実運送事業者の商号または名称
- 実運送事業者が実運送を行う貨物の内容および区間
- 実運送事業者の請負階層(1次請け、2次請けなど)
- その他国土交通省令で定める事項
このように、実運送体制管理簿には必須の記載事項があります。作成の方式は事業者が作成しやすいもので問題ありませんが、これらの事項を記載できる方式にしましょう。
実運送体制管理簿を作成していない場合の罰則は?
実運送体制管理簿作成の対象であるのに、管理簿を作成・保存しなかった場合、罰則はないものの『トラック法第33条』に基づく行政処分の対象となる可能性があります。
また、実運送体制管理簿に係る通知義務違反をした場合も、罰則はないものの『トラック法第33条』に基づく行政処分の対象となる可能性があるので、注意しましょう。
まとめ

実運送体制管理簿は、これまで不透明だった運送業務の受託構造を記録・管理することで、見える運送構造が実現し、運賃や労働の適正化や安全の確保が目指せる制度です。令和7年4月1日より義務化されたため、事業者は管理体制や記録フォーマットの準備を進めなければなりません。時間や指導教材の確保に時間を頭を抱えているなら、e-ラーニングシステム「グッドラーニング!」がおすすめです。
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